ペルチェ素子を用いた上腕冷却による手首計測体温制御デバイスの設計と実装

抄録

2020 年 1 月に,中華人民共和国湖北省武漢市で発生し,同年に日本での感染者が確認された新型コロナウイルスの日本全国での累計感染者が 200 万人に迫っており,ウイルスは現在も変異を繰り返しており,未だに収束は遠い.感染対策は必須であり,人が集中する飲食店,デパート,テーマパークなどの商業施設においては,重要である.商業施設では,感染対策として,施設利用者の入場時,手の消毒,体温計測が行われている.商業施設における体温計測では,一般的に非接触型を用いて行われている.しかしながら,非接触型の体温計は,人体に何らかの制御を行うことが可能であった場合に,発熱のある入場者の発見が困難であり,入場時の手首での体温計測による検温が感染対策をなさないと考えられる.本研究では,商業施設における入場時の検温においての手首で計測される場合の脆弱性に示すために,手首で計測される体温を制御する手法を提案した.提案手法は,上腕を冷却することで,血流を冷やし,手首で体温を計測する体温計が検知する赤外線の強さ(エネルギー量)を弱くすることによって,体温を低下させるデバイスの設計,実装を行った.実装したデバイスの冷却装置には,ペルチェ素子を用いた.ペルチェ素子は,小型で軽量.使用時に,騒音や振動もなく,電流の方向を変えるだけで,冷却だけではなく加熱も可能である.また,電流の量に比例した冷却・加熱の両機能を利用すれば,常温付近での制御も可能である.評価実験では,実装デバイスを用いて,上腕冷却を行い,体温の推移を計測する実験,冷却強度,冷却時間を変更した実験の 3 種の実験を行い,合計 10 名の被験者で,9 名の被験者の体温を低下させることに成功し,上腕での血流冷却によって,手首で体温を計測する体温計が検知する赤外線の強さ(エネルギー量)を弱くすることが可能であると分かった.冷却された体温は冷却強度,冷却時間と関係なく冷却終了後は維持されづらいこともわかった.

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