義歯と関連した口腔内多愁訴症例に対しかかりつけ歯科医と連携して治療した1例

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  • Case of multiple oral complaints related to dentures treated in collaboration with a family dentist

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抄録

義歯治療を契機として舌を含めた口腔粘膜の疼痛を訴える患者に対し,かかりつけ歯科医と連携して治療にあたった症例を経験したので報告する. 患者は70代女性で,X - 4 年義歯不適合で近医歯科を受診し,残存歯の抜歯後に義歯調整を受けるうちに口蓋のヒリヒリ感を自覚するようになった.新義歯が作製された後もさらに上顎歯肉,舌,口唇とヒリヒリ感の範囲は拡大した.皮膚科での金属アレルギー検査は陰性で,以後複数の歯科で4 回にわたり義歯の再製作,調整を繰り返した.その経過中に近医口腔外科を受診し口内異常感症と診断され,立効散含嗽,ロフラゼプ酸エチル,小柴胡湯が投与されたが一時的な効果しか得られなかった.X - 1 年に新たに受診した歯科で義歯が再製作されてからは,義歯床下粘膜の異常感は軽快した.しかし,舌のヒリヒリ感は残存し口腔乾燥も訴えたため同科からの紹介にてX年当科を受診した.初診時,口腔内には特記事項を認めなかった.CMIはⅢ領域(特記事項なし)で,舌痛のVASは83であり,舌痛症と診断した. 床縁,研磨面形態の修正や床裏装などの広範囲に及ぶ義歯治療を行うと,口腔内の感覚を大きく変えることになり,それを契機に症状が悪化して当科の治療が奏効しない可能性があったため,義歯調整は咬合の微調整など必要最小限にしていただくよう紹介元歯科に依頼し,連携を取りながら治療を進めていくこととした.当科の治療では,簡易精神療法による認知の修正と漢方薬の投与を並行し,症状は一時ほぼ消退した.しかし,その後再燃したためエスシタロプラムの投与を開始した.これが著効を示し症状は消失したため減量を開始し,投薬終了後から現在まで症状は再燃していない.

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