キャリア教育に関する理論基盤についての一考察 ― 淘汰の要因としての「仕事」と育成する資質としての「交換力」―

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  • キャリア キョウイク ニ カンスル リロン キバン ニ ツイテ ノ イチ コウサツ トウタ ノ ヨウイン ト シテ ノ シゴト ト イクセイ スル シシツ ト シテ ノ コウカンリョク

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抄録

キャリア教育は、国の推進もあり各学校段階において積極的に取り入れられている。しかし、望ましい勤労観、職業観を養ったところで、就職超氷河期やワーキング・プアに代表されるような現今の厳しい経済情勢の中で、それが実際にどの程度役に立つのか、といった根本的な疑間も持たれている。本研究では、経済情勢の行き詰まりを、近代以降の生産の集中、拡大路線が富の蓄積と市場の飽和によって破綻しつつあることのあらわれと見なし、人間が働くことを意図的に行う生産活動及び生存に必要な行動と定義した上で、先史時代から近代までの人間にとっての働くことや仕事の特色を次のように分析した。一つは食料資源の確保といった生きていく上での基本的な部分であり、もう一つは他の人々を征服するための道具づくりである。その結果として、生産の集中と大規模化が起こったのである。このことから考えると、行き詰まりを打開するには、大量生産型の生産スタイルを修正し、技術力を保ちながら生産の分散化と小規模化を図ることが必要となるだろう。そのためには、生産したものを他者に提供する作り手として高潔な倫理観や道徳性が必須となる。こうした倫理性も含んだ高度な生産能力を「交換力」と位置付けた。他者を出し抜き、征服するための道具づくりから、他者に感謝されるものづくりを基本とするわけである。この「交換力」養っていくのが、キャリア教育の役割なのである。

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