〈少女〉の呪縛、その循環をめぐって -山田詠美「蝶々の纏足」論-

抄録

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「蝶々の纏足」は、山田詠美がデビュー以来に初めて〈少女〉同士の親密な関係性を描いた作品である。山田詠美の描く〈少女〉は、『晩年の子供』や「箱入り娘」など、現在もなお繰り返し描かれている主要モチーフの―つである。しかし、〈性〉と〈恋愛〉を描く作家というイメージに隠され、その正体は十分に考察されているとは言えない。そこで本稿では、山田詠美の描く〈少女〉の始まり、そしてその展開を知る一端として「蝶々の纏足」を読み解いていく。まずは、本テクストを流れる時間列に沿って「私」と「えり子」の関係性を考察し、そこからの逃避として描かれる「麦生」との〈性愛〉の意味について考えていく。そして最終的に、少女同士の癒着した関係性を描くことを通して、山田詠美の作家としての素地が形成される七〇・八〇年代の〈少女文化〉を、山田自身がどのように相対化し、そこからいかなる表現を獲得したのかを明らかにしたい。

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