熱帯果樹カカオを活用した生物環境に関するESD教材開発

書誌事項

タイトル別名
  • Development of ESD materials on biological environment using the tropical fruit cacao

抄録

世界で広く食されているチョコレート製造に欠かせないカカオ豆であるが、栽培適地は限られており、日本での栽培事例は未だ乏しいのが現状で、植物としてのカカオを見る機会は日本では少ない。環境や文化の異なる異国の地で栽培されたカカオを題材とした活動や学習は、生産者であるカカオ農家についての理解を深めるきっかけとして、多文化理解を促すESD教材になり、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」の達成にも貢献できる可能性がある。そこで、職業に関する教科の一つであり、食品に関する内容を取り扱っている農業高校において、熱帯果樹であるカカオを活用したESD教材を研究した。カカオ苗の栽培では、4年越しで開花を観察することができた。熱帯地域におけるカカオ栽培の苦労や現状を日本でのカカオ栽培を通じて生徒が実体験することにより、生徒たちの達成感や栽培への責任感を育むことができた。この経験はカカオ豆の栽培過程にある現地農家の現状を知るきっかけとなり、多文化理解を促すと考えられる。世界の課題や現状を自分事と捉え、食べ物を大切にしようという価値観や行動にもつながる可能性があり、カカオ栽培を含めたESD教材としての熱帯果樹カカオは、持続可能な社会形成に寄与する人材育成のための教材に成り得ると考察した。2種のカカオ豆を用いたbean to bar製造では、食品化学の観点から、生徒の新たな発見や気づきが確認された。チョコレートの溶けやすさが課題であったので、今後はスキムミルクとカカオバターの割合を調整する必要がある。カカオをESD教材として取り扱った一斉授業では、プロジェクト学習で取り組んでいる課題を一斉授業として取り扱った時の効果が示された。カカオ豆の製造には発酵が関わっていることから、発酵と微生物の関わりについて、科目「微生物利用」の授業で更に活用できる可能性があり、農業高校でのESD教材としたカカオの活用について、今後も更なる研究を進めていく。熱帯果樹であるカカオの栽培やその加工品であるカカオ豆を用いたbean to barの製造は、農業高校での学びにとどまらず、生涯学習としてのESD教材になると考えられる。カカオをESD教材として活用するためには、日本の気候や風土を考慮した栽培方法を研究開発していく必要があり、未だ日本での栽培実績に乏しい熱帯果樹カカオについては、今後も調査研究を継続していく。

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