イチゴ炭疽病の伝染様式の解明と診断・防除技術の確立
書誌事項
- タイトル別名
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- Lifecycle analysis and control technique development of strawberry anthracnose caused by Colletotrichum fructicola
- イチゴタンソビョウ ノ デンセン ヨウシキ ノ カイメイ ト シンダン ・ ボウジョ ギジュツ ノ カクリツ
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説明
高品質で良食味の日本産のイチゴは,国内はもとより海外でも非常に人気が高く,国内農業再生や輸出戦略の要となる品目として期待されている。しかし,現在のイチゴ主要品種は炭疽病に対して極めて弱く生産拡大の制限要因になっている。本病の病原は真菌のColletotrichum属菌であり,植物体のあらゆる部位に感染して最終的に枯死させる。本病はイチゴの最重要病害であり,全国での年間被害は890ha,35億円に上るとされる。近年,イチゴのブランド品種が全国各地で開発され,それに伴ってイチゴ原種苗の流通量が増加し,本病がより広がりやすくなっている。さらに,殺菌剤の多用による本病菌の薬剤耐性菌の発生が頻発しているとの指摘もある。そのためこれらの新たな課題への対策がイチゴの生産現場で急務となっている。そこで本研究は,イチゴ炭疽病の発生生態の現状を明らかにし,それらに対応した診断・防除技術を開発することを目的とした。まず本病の新たな伝染源としてイチゴ栽培圃場周辺で生育する雑草を評価した。次に本病診断技術の課題であった検査時間の短縮と感度の向上をPCRの迅速性と高感度性を利用して実現し,原種苗生産圃場での有効性を検証した。一方,産地における本病発生を広域的に予測するための簡便な検出法を考案して病害発生予察への応用を試みた。さらに本病防除における殺菌剤の過用を緩和するために,食品の殺菌処理技術を応用した新たな防除技術の開発を検討した。
収録刊行物
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- 奈良県農業研究開発センター研究報告
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奈良県農業研究開発センター研究報告 (53), 79-128, 2022-03
橿原 : 奈良県農業研究開発センター