世界のフードセキュリティと栄養 : FAOの旗艦刊行物における議論を中心に

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タイトル別名
  • Nutrition as an integral dimension of global food security : Arguments in FAQ’s flagship publications
  • Nutrition as an integral dimension of global food security : Arguments in FAO's flagship publications

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抄録

近年広く使われるフードセキュリティという言葉には多様な意味が含まれており,解釈が容易ではない。本稿では主に国連食糧農業機関(FAO)が毎年発表している旗艦刊行物の2つである「The State of Food and Agriculture (SOFA)」と「The State of Food Insecurity in the World(後に『The State of Food Security and Nutrition in the World』に改称;SOFI)」を基に,フードセキュリティ概念の変遷を,その重要な要素である栄養の問題に重点を置きながら整理した。結果,フードセキュリティ概念は国家から個人へ,また,エネルギー不足から栄養不良へと論点を拡大させていることが確認された。エネルギー不足によって示される飢餓と,栄養不良は今日2つの重要なテーマであり,これらはフードセキュリティの状態を示す複雑な指標に不可欠な要素となっている。本稿ではまた,世界の栄養不良とこれを把捉するための方法論の展開を把握するため,SOFAとSOFIの範囲を超え,近年の研究から得られる微量栄養素欠乏のデータを整理した。この結果,鉄分等の摂取不足が世界的に深刻である点や,栄養不良が特定の年齢や性別で顕在化しやすい点が確認された。本研究は,栄養と密接に結びついたフードセキュリティ概念の理解と,世界の栄養状態の把握に寄与する。

収録刊行物

  • 開発学研究

    開発学研究 32 (3), 18-27, 2022-03

    藤沢 : 日本国際地域開発学会

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