「尊厳をもって死ぬ権利」を巡る闘い ―フランスにおける「緩和ケア」―

書誌事項

タイトル別名
  • The Struggle for Right to Die with Dignity ―Palliative Care in France―
  • 「 ソンゲン オ モッテ シヌケンリ 」 オ メグル タタカイ : フランス ニ オケル 「 カンワ ケア 」

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抄録

近年,自分の納得のいく最期を迎えるために,いつ,どのように死ぬかを自律的に決定したいと望む人が増加傾向にあるように思われる。 本稿は,フランスにおける「緩和ケア」に着目しながら,「自己決定」と「死ぬ権利」の関係について考察する。今日,フランスに代表されるように,患者は「緩和ケア」を受け,延命を拒否することが可能であり,それは患者の権利として法的に守られている。「緩和ケア」として,終末期の苦痛が激しい患者に,鎮静剤や鎮痛剤を投与し,死亡するまで意識の低下した状態が保たれるようにする「持続的で深い鎮静」が行われることがあるが,この「持続的で深い鎮静」の捉え方が問題となる。果たして「持続的で深い鎮静」は治療の手段か,それとも死ぬための援助か。 フランスでは,この「持続的で深い鎮静」が延命治療の差し控えや中止において,「死ぬ権利」と「尊厳」を巡る闘いへと発展している。その時,「死ぬ権利」は,単に,患者自らが積極的に死に関わる権利のことを指すのではなく,「不合理で執拗な治療」を中止する権利へと移行しているように思われる。 こうした問題意識の下,フランスにおける3つの事件を追いながら,自己決定の捉え方および治療中止と「尊厳死」について考察し,「安楽死」合法化の倫理的な是非を検討した。

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