『純粋理性批判』原則論に見られるカントの実体論 ―第三類推から第一類推を読み返す―

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タイトル別名
  • Kant’s Theory of Substance as seen in the “Analytics of Principles” of the Critique of Pure Reason ―Reading Back from the Third Analogy to the First Analogy―
  • 『 ジュンスイ リセイ ヒハン 』 ゲンソクロン ニ ミラレル カント ノ ジッタイロン : ダイサン ルイスイ カラ ダイイチ ルイスイ オ ヨミカエス

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抄録

実体概念は古来より哲学・形而上学の中心に置かれてきたが,カントの批判哲学においても,それは重要な役割を担っている。ところが,その実体概念が集約的に論じられている『純粋理性批判』原則論の「第一類推」の内容を正確に理解することは,きわめて困難である。そこで本論考では,実体間の相互作用の原則を扱った「第三類推」の内容を先立って検討することをもって,「第一類推」を解釈するための準備的考察とする,という戦略をとった。これによって,カントの実体概念に関する無用な誤解を防ぐとともに,統一的で明確な実体概念を取り出すことができた。それによれば,実体は恒存的なものとして,時間の代行者の役割を果たすとともに,事物の変化の主体・担い手としての役割を果たすという,二重の機能をもつが,その二つの機能が統合的にはたらくのは,自然科学的経験のレベルにおいてのみであることが究明された。それと同時に,そうした実体概念によっては,時間の不可逆性を表すことができないという,カント実体論の限界が露呈し,こうした欠落を補うべく,新たな実体概念を模索する試みが示された。

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