大統領の不能と執行権 : 合衆国憲法修正第二五条の意味
書誌事項
- タイトル別名
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- Presidential Inabilty under the 25th Amendment
説明
執行権の長は、議院内閣制が柔軟にすり替えることができるのとは対照的に、アメリカの大統領制ではいったん選ばれれば、大統領職に不適格と認識されても、任期の四年間は交代させることはできない。弾劾罷免の制度は適用要件のハードルが高く、大統領がこれで失職させられたことはない。もっとも、アメリカ憲法修正第二五条は、大統領が死亡などのほかに、不能になった場合、副大統領に継承させることができるとしている。同条四項を現職のトランプに適用しうるとの議論が湧き出ているけれども、それは可能なのか。本稿は、同条の意義をその制定の背景や経緯から考察し、構造的および文理的解釈も行いながら吟味して、特に「不能」がどのような基準でどのように判断されるのかを考察する。同条が大統領職の偶発的不在に執行権の空白を生まないよう、円滑な継承や代行のための規定であるのを指摘する。ただこの四項は大統領の不能を大統領以外の者が判断できるとする陰謀の様相を秘めており、その不能の判断の基準や決定権者、プロセスが明確にされることが課題となる。同条の制定や運用には、アメリカの立憲主義の執行権の不休を確保する努力をくみ取ることができるのである。
収録刊行物
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- 法学新報
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法学新報 126 (1-2), 195-246, 2019-07-26
法学新報編集委員会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050858829285746688
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- ISSN
- 00096296
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB