シラーとスピノザ ―自然概念をめぐる一考察―

書誌事項

タイトル別名
  • Schiller and Spinoza : A Study on the Concept of Nature

説明

本論考は、シラーおよびスピノザの諸著作の検討を通して、一般的にはほぼ指摘されることのない両者における自然概念の類似性を明らかにし、それによってシラー美学の特質およびその美学史上の特別な意味を新たに掘り起こすことを目的とする。シラーとスピノザには直接的な影響関係はほとんどないにも拘らず、シラーの美学思想における「美的自由」の概念とスピノザの『エチカ』にみられる「第三種の認識」および「直観的認識」の概念には大きな類似点が捉えられる。この両者には、スピノザが捉える「神即自然」としての自然理解が共通しており、このような自然をシラーは「現実の自然」に対する「真実の自然」として捉え、その「真実の自然」を描写することこそが芸術家の使命であると考えた。このようなシラー美学の根底にある自然観・芸術観は、まさにヘルマン・コルフが言う「ゲーテ時代の精神」に重なるものであり、そのようなシラーの美学思想には、カント美学研究を経た後にもなお、スピノザの自然思想との強い共通性が見て取れるのである。

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