【研究ノート】日本における「スペイン風・南欧風」建築への偏愛について

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  • 【Research Note】On the Predilection for 'Spanish and Southern European-Style’ Architecture in Japan

抄録

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戦前の日本では、米国経由のスパニッシュ様式建築がファッショナブルな建築様式と捉えられ、1920年代以降、白壁とオレンジ色の洋瓦の個人住宅、ホテルなどの公共建築でこの様式を採用するものが増加した。戦後は、飲食店でもスパニッシュ様式が流行し、1970年代にはマンションでも好まれ、気候・地形的に地中海と親和性が高い地域だけでなく、南国のイメージと結びつきにくい内陸部にも南欧風意匠の建物が広がった。  1980~90年代は、バブル景気によって海外旅行がより身近になり、本物の南欧建築に接する機会が増え、オレンジ瓦と白壁のスペイン風建築がさらに流行する。1992年は、バルセロナ・オリンピックとセビリア万博の開催もあり、スペイン風でもとくにアンダルシア風建築への偏向が強まり、気候・地形的に地中海と親和性が高いところを中心に、アンダルシア風をイメージしたリゾート開発やまちづくり(伊王島、賢島、沖縄、宇和島、淡路島、南房総、宝塚、横浜本牧など)が行われた。  バブル崩壊後は、外国をテーマにしたテーマパークは廃れてしまったものの、スペイン風・南欧風の町並みを再現した商業施設(アウトレット、ショッピングモール、ホテル、結婚式場)を建設する流行は続き、近年はSNSで写真映えする関心から撮影スポットとなり、映画やドラマのロケ地としても注目されている。コロナ禍中の渡航制限や解除後も円安インフレで旅費が高騰し海外旅行がしづらくなると、国内にいながら外国気分に浸れる場所として、海外の建物や町並みを模した商業施設の人気が再燃している向きもあるが、バブル期に興隆したスペイン・南欧風の建物は、そろそろ過去の遺産の仲間入りをする準備段階に来ている。

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