『伊勢物語』に表れた絶望・悲観と倫理観

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タイトル別名
  • イセ モノガタリ ニ アラワレタ ゼツボウ ヒカン ト リンリカン
  • Despair, Pessimism and Ethics in The Tale of Ise

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説明

『伊勢物語』の心情、絶望や悲観を表す語に着目して、そこに表れた倫理観を考察する。「はづかし」に表れた恥の感覚は、「みやび」という美意識に反することだけでなく、男女の長期にわたる恋愛関係における暗黙のルールとして規範性をもつものである。また、「つらし」は相手の薄情を恨む語であるが、それが詠み込まれた歌には相手への熱情があふれている。それに加えて、「くるし」には、愛人の秘匿や相手を待つ身、貴賎の恋という自分ではどうすることもできない耐え難い苦しみが表されている。これらの心情、絶望や悲観に見られる倫理観とは、美意識である「みやび」とも関連して、都で相手を信じて待ち続ける態度や相手への誠実な言動という持続的な男女関係における恋愛のルールであるとも言える。また、貴賎の恋を明確に否定する倫理観も見られる。これらの倫理観を土台として「歌の力と人の心への信頼」を理想としているのが、『伊勢物語』という歌物語であると考える。

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