カタルシスの観点から見た「千と千尋の神隠し」についての一考察

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Abstract

カタルシスは,セラピーとして心のしこりが話されることによってもたらされるだけでなく,悲劇などの観劇に際しても起こる心の浄化・排泄作用でもあるので,カタルシスがテーマとなっている物語として「千と千尋の神隠し」を取り上げ,主人公を事例としてとらえ,分析した。そして,物語全体をトラウマによる解離状態の中での夢(幻想)の体験としてとらえると,そこで無意識への退行が起こり,その中でのトラウマの記憶の想起がカタルシスをもたらし,解離からの回復にもつながったとみることができた。このプロセスは,フロイトの夢の理論や対象関係論の諸概念,またユング心理学の補償や個性化過程の考え方を適用することで心理的な現実についてのいっそう整合性のある解釈に結びつき,セラピーにおけるカタルシスやそのプロセスについての臨床的な意味を理解することにも貢献すると思われた。

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