ブランド経験概念へのメタファー研究の活用 : 身体に基盤化された認知の視点から

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タイトル別名
  • A Conceptual Study for Metaphor and Brand Experience Construct, Through the Embodied Cognition Approach
  • ブランド ケイケン ガイネン エ ノ メタファー ケンキュウ ノ カツヨウ シンタイ ニ キバンカ サレタ ニンチ ノ シテン カラ

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抄録

P(論文)

本研究は、ブランド研究の重要なテーマとされるブランド経験(Brand Experience)概念のさらなる理解に向けて、認知意味論研究の知見、すなわち経験を基盤とする「認知メタファー」についての知見を新たに導入することで、ブランド経験研究の次の方向性を示すことを目的としている。先行研究のレビューから、ブランド経験に関しては、既存の測定尺度(例えば、Brakus et al., 2009)を活用した定量的研究が進み、ブランドロイヤルティなどブランド関連構成概念との関係が解明されつつある。一方で、ブランド経験の概念自体についての質的検討が乏しいという問題も指摘されている。これに対し筆者は、近年、「身体性認知科学」とも共鳴しながら発展してきたCMT(Conceptual Metaphor Theory:概念メタファー理論)およびその発展型である身体性メタファー理論(鍋島,2016)に注目した。これらは、人が身体的経験を基盤として世界を推論する仕方としてメタファーを位置づけている。筆者は、このようなメタファー理論のフレームワークを用いることで、ブランド経験を「認知システムとしてのブランドにおける推論装置」と捉え直すことの可能性を理論的に示した。メタファーは長年、文学的修辞(レトリック)と見なされてきたが、Lakoff & Johnson(1980)以降、メタファーは人の認知と思考の基盤構造の一種と考えられるようになっており、近年では人工知能の設計にも活用が進んでいる。メタファーの考察はときに主観的な解釈論に留まりがちだが、明示的な構造のフレームワークを持つことで、実証的な議論と研究が進むことが期待できる。また、本研究は、ブランドの「想像的成分」(田中,2017)とは何か、という問いかけへのアプローチにもなっている。これはブランド研究に対して学術的な価値を持つだけでなく、ブランドマネジメントに関しても実務的な示唆を提供するであろう。

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