スミス動態論による重商主義批判

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  • スミス ドウタイロン ニヨル ジュウショウ シュギ ヒハン
  • The Criticism to Mercantile System by Smith's Dynamic Theory

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抄録

(1)従来のスミス『国富論』研究(通説)は同体系の不完全性を突いてその破綻説を唱えたが,逆に同破綻説が不完全であれば,同体系は破綻説を免れる(疑わしきは罰せず)。(2)同書の分業=生産力では,労働の技量は単純化を介して敏速化し,能力を向上させ,同時にその単純化は機械発明を容易にし,機械化→製品単価減を必然化する。これにより生産量増加→総価値増加の動態論が成立する。(3)通説はスミスの先行的蓄積論を理論的に空洞化し,それをマルクス原蓄論が克服したと言うが,後者は労働能力一定の静態論に対し,本来の前者は能力増進の動態論だから,重商主義論も前者視点が優先するはずだ。(4)スミスはこの動態論を生命力の「未知の原理」に比喩する。マルクス主著のスミス価値論批判も不適切で,スミスの動態的価値法則論は貫徹される。その重商主義は価値法則に便乗してそれを特定の業界利益に歪め,その分,本来の価値生産を減少させるから,除去対象とされる。(5)重商主義論の発端はここにあり,これを静態的な歴史・政策論と解した通説はその発端に戻される。元来,重商主義は理論用語であって,それが歴史認識に適用されるものだろう。

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