The current hybridization between the endemic Morus boninensis Koidz. and the invasive Morus australis Poir. in the Ogasawara Islands

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  • 小笠原諸島における固有種オガサワラグワと侵略的外来種シマグワとの交雑の現状

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抄録

侵略的外来種が近縁な自生種に与える悪影響は、それらの間での交雑が起きる可能性があるため、特に固有種が多い海洋島で深刻である。本研究では、小笠原諸島の固有種であるオガサワラグワ(Morus boninensis, 4 倍体)と、それに近縁な侵略的外来種のシマグワ(M. australis,2倍体)に焦点を当てた。この研究の目的は、オガサワラグワの自生地の実生集団におけるシマグワとの雑種の割合を推定すること、ならびにオガサワラグワの種内の遺伝的多様性を評価することである。本研究では、小笠原諸島におけるクワ属植物の2 つの野生実生集団、オガサワラグワの2 つの成熟個体集団、および12 のシマグワの成熟個体集団で観察と植物サンプルの採集を行い、14 個のマイクロサテライト・マーカーを用いて集団遺伝学的解析を行った。UPGMA 解析、主座標分析(PCoA)、およびベイズ・クラスタリング解析の結果、小笠原諸島産のこれら2 種の間で明確な遺伝的分化が認められた。そして、おそらく倍数性レベルの違いによって、2種間の遺伝子流動はほとんど起きてはいなかった。雑種は、実生集団でも全くみられなかった。シマグワの交雑を通じての固有種オガサワラグワへの悪影響は、このように限定的であることが分かった。さらにオガサワラグワは、絶滅危惧種であるにもかかわらず、種内に高い遺伝的多様性(He = 0.53; AR = 3.27)を維持していることも明らかになった。オガサワラグワの個体数を増やすことができれば、この種を絶滅から救える可能性がある。

収録刊行物

  • 小笠原研究

    小笠原研究 48 217-235, 2022-03

    東京都立大学小笠原研究委員会

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