WTO上級委員会問題の経緯と解決に向けた一考察

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タイトル別名
  • A Study of Backgrounds of WTO Appellate Body Crisis and the Possible Way Forward
  • WTO ジョウキュウ イインカイ モンダイ ノ ケイイ ト カイケツ ニ ムケタ イチ コウサツ

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説明

WTO紛争解決制度は,1995年の発足から現在まで約600件の紛争が付託され,パネル・上級委員会によるWTO協定違反の判断を受けて加盟国は当該措置を是正してきたことから,その実効性が高く評価されてきた。  ところが,2017年頃から米国が上級委員の再任を拒否,任期満了後の上級委員に代わる新たな委員の選任がブロックされるようになった。各国は打開案を模索したが,2019年12月10日には 7 名の上級委員中 6 名が空席となり,上級委員会は事実上機能停止に陥った。  USTRが2020年 2 月に発表した上級委員会に関するレポートでは,米国が長年疑義を呈してきた上級委員会による権限逸脱,司法積極主義,その背景として,WTO交渉機能不全が根幹にあることが指摘されている。これに呼応するように,EUは2021年 2 月に貿易政策レビューを発表し,上級委員会問題へのEU側の見解を示した。  本稿では,上記USTRレポートを概観しながら,米国が上級委員選任を拒絶し続ける背景,それに対するEUの主張,上級委員会が内包する制度的問題点を検討し,上級委員会問題の解決に向けた一考察を行うと共に,上級委員会が機能停止している状況下における各国の動きについても概説する。

収録刊行物

  • 法学新報

    法学新報 128 (10), 803-821, 2022-03-30

    法学新報編集委員会

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