戦後米国における地域研究促進体制の整備・確立とその変容 ― 地域研究推進に向けた社会科学研究評議会(SSRC)の活動を中心に ―

抄録

本研究ノートは,第二次世界大戦中・戦後直後から1990年代前半までの時期を対象として,米国における地域研究促進に向けた研究教育体制の整備・確立とその変容を辿る。その際,終戦直後から米国における地位研究促進に中心的役割を果たした社会科学研究評議会及び助成財団(特にフォード財団)に集った社会科学研究者や関係者たちが,如何なる理由・動機から世界各地を対象とする地域研究を促進しようとしたのか,またそれをめぐってどのような論争が起こったのかに関して,幾つかの時期に区分けして彼らの言説を辿ることによって分析と考察を加える。 本研究の趣旨は,米国における地域研究は,戦後当初は米国の地政学的関心に基づく国益推進のための学知として推進された一方,次第に社会科学と人文科学の融合による学際的研究の推進を通じた学知の構築,続いてグローバル化の時代に適合した国際比較の観点を重視した地理的境界に拘らない「ローカルな知」の集積が指向されるようになり,その意味で単なる「冷戦的学知」にとどまらない学術的内容をめぐる議論へと変容していったという点である。その意味で,米国の地域研究を専ら「冷戦的学知」として狭く規定する理解に一石を投じるものである。

収録刊行物

  • Ignis

    Ignis 3 191-216, 2023-12-31

    京都外国語大学国際言語平和研究所

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