北海道家庭学校寮長藤田俊二の校長谷昌恒との対話的関係とその意義ー寮生を仲立とする校長講話「ローマ人への手紙」に対する寮長藤田の応答を中心にー

抄録

本稿は、北海道家庭学校寮長藤田俊二が、校長谷昌恒とどのような対話的関係を示していたかという問題をとり上げた。その際、藤田の日誌資料を手がかりに、パウロ「ローマ人への手紙」に関する校長講話についての寮生の反応を仲立ちとした藤田のうけとめを跡づけ、創設者留岡幸助の開校前の「試錬」に関する論説( との関連から、その対話的関係性の特質と意義を考察した。その結果、谷は学校を方向づける中心的な理念、とりわけ「試練」を理念としてうけ継ぎ、寮生、職員に提示するという役割を、他方、藤田は実践を通じてその理念を実証するという役割をそれぞれ果たしている特質が明らかになった。そのような協働的な行為の相互性が認められる対話的関係を通じて、谷校長―藤田寮長時代の家庭学校が「試練」を理念とする教育共同体として不断に構築していることが考察され、その成り立ちの構図を理念型概念として設定することができた。

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