ケインズ『貨幣論』:金融史理論としての再評価

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タイトル別名
  • Reappraisal of Keynes’s A Treatise on Money as the Theory of Financial History
  • ケインズ 『 カヘイロン 』 : キンユウシ リロン ト シテ ノ サイヒョウカ

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抄録

この論文では,ケインズ『貨幣論』を金融史理論として再評価する.そして,『一般理論』へと発展する道筋を探求する.ケインズは,『貨幣論』において,貨幣経済の分析枠組みとしての基本方程式を,主として英米の金融史の理解に応用することを試みていた.『貨幣論』は,これまで『一般理論』のマクロ経済学によって吸収し尽くされた過去の著作として理解されてきたが,貨幣・金融の歴史理解のためには,むしろ『一般理論』よりも優れた視点も提供していた.それは,古代通貨の研究に始まり,国家貨幣と銀行貨幣という現代貨幣の二大分類に至る系譜を明らかにし,さらに投資の拡大によって促される投資金融経済の発展の原理を解明する著作として,理解することができる.そして,『一般理論』の理論革新の前提として,貨幣・資本理論の連続する革新過程をそこに読み取ることができる. この論文では,貨幣経済の変動を基本方程式に従って,①貨幣的要因,②投資要因,③産業要因という3 つの要因から究明するとともに,主として英米の金融史における「例証」を検討することによって,『一般理論』へと至るケインズの貨幣経済学の革新過程を理論的かつ歴史的に究明することを目指す.そして最後に,1929―32 年の世界恐慌に始まる大不況の教訓を生かして,現代のマクロ金融経済史の理論を作り上げていくための道筋を明らかにする.

収録刊行物

  • 經濟學季報

    經濟學季報 73 (4), 35-95, 2024-03-08

    立正大学経済学会

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