現実化としての『超越論的方法論』

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抄録

カントの主著の一つに数えられる『純粋理性批判』には、これまで膨大な研究の蓄積がなされている。しかし、『純粋理性批判』の「超越論的方法論」については、断片的な研究がなされているとはいえ、一貫した読解に基づいた研究がなされていない。しかし、「超越論的方法論」は、『純粋理性批判』において対をなすもう一つのパートである「超越論的原理論」の議論を踏まえながら、現実の認識を旨とする理論的認識から実践的認識への転換を扱っている。そして、その転換の軸となっているのが、理念としての対象を現実にしようとする「現実化」である。本稿では、「超越論的方法論」が、この「現実化」が析出されていく一貫した過程であることを、「超越論的方法論」のランニングコメンタリーを通して明らかにする。

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