[論文] 三木茂博士採集標本に基づく東京都江古田針葉樹層の形成年代とフロラの再検討

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  • [Article] Reexamination of Age and Flora of the Egota Conifer Bed, Tokyo, Based on Dr. Shigeru Miki Collection

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抄録

東京都中野区江古田で直良信夫博士により発見された江古田針葉樹層の大型植物化石群は,三木茂博士が分類学的記載を行い,更新統末期の寒冷気候下の植物化石群として位置づけられた。これは最終氷期の寒冷期植物化石群の日本での最初の発見であり,最終氷期の古環境を示す標準的な植物化石群とされている。その後の,江古田とその周辺に分布する針葉樹層の年代測定では,最終氷期のMIS 3から晩氷期までの広範囲の測定結果が得られており,ヤンガー・ドリアス期に対比されたこともある。そこで,最初に発見され三木により定義づけられた,江古田針葉樹層の植物化石群の年代と種組成を明らかにするために,大阪市立自然史博物館に所蔵されている三木茂標本を再検討し,放射性炭素年代測定を行った。その結果,マツ科針葉樹4点とコナラ1点の暦年較正年代は,約25,000cal BP から20,000cal BP の範囲に含まれており,最終氷期最寒冷期後半のものであることが明らかになった。針葉樹層由来と考えられる大型植物化石は木本22分類群,草本26分類群で構成されており,カラマツとトウヒ属バラモミ節の標本の個数がもっとも多かった。三木の文献に記載された25分類群のうちスズメノヤリ近似種の果実と種子は,それぞれミゾソバ果実とスミレ種子の誤同定だったほか,新たな分類群が追加された。三木標本から復元される古植生は,関東地域の他の最終氷期最寒冷期の植物化石群と同様に,マツ科針葉樹の産出量が多い一方,多様な落葉広葉樹種を含むことで特徴づけられた。

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