方言の推量形式における意味変化 : 談話的機能へ

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タイトル別名
  • Semantic change of conjectural forms in dialects of Japanese : To discourse function
  • ホウゲン ノ スイリョウ ケイシキ ニオケル イミ ヘンカ ダンワテキ キノウ ヘ

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抄録

本稿では、愛知県岡崎市方言、静岡県静岡市方言、神奈川県茅ヶ崎市方言におけるそれぞれの推量形式ダラ、ラ、「ベ」を対象とし、それらの形式が、「推量」(および「疑い」)という命題に対する話し手の態度を示す用法では使われにくくなり、「確認要求」という談話的な機能に使用がかたよってゆくことを取り上げて議論をおこなった。いずれの推量形式も、明治・大正生まれ世代のことばを記録した談話資料・民話資料では推量用法といえる例が見られるものの、現在の若年層にあたる昭和50 ~ 60 年代生まれ世代では、推量用法での使用がおおむね不自然なものと内省されるようになっている。具体的には、生起位置は文末にかぎられ、終助詞ナとの共起も不自然なものとされるようになる。一方、確認要求用法では若年層でも変わらず使用が認められる(3 節)。これと似た傾向は、標準語のダロウについても計量的な報告がすでにあり(土岐2002)、推量体系が命題から切り離された、より主観的なものになるという古代語からの変化(山口1991)を考えても、推量形式が談話的な機能(具体的には確認要求用法)へ移行しつつあるという流れが、方言をふくめた日本語の推量形式全体に関わる変化として推測される(4.1 節)。同様に、推量形式の通時的変化としてこれまで指摘されている、近代語のいわゆる「分析的傾向」(田中1965)や、東日本方言における「ベ」の前接形式への接続の単純化(井上1985:ch.11)なども、談話的機能へという意味変化とつながりあった事象として位置づけられる(4.2-3 節)。

収録刊行物

  • 阪大日本語研究

    阪大日本語研究 23 57-77, 2011-02

    大阪大学大学院文学研究科日本語学講座

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