『古き批評の森』におけるヴィンケルマン受容の考察 : ヘルダーの歴史哲学の源泉について

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  • A Study of Winkelmann’s Reception in The Old Critical Forest On the Sources of Herder’s Philosophy of History

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抄録

本稿が考察の中心に据えるのは,ヨハン・ゴットフリート・ヘルダーの『古き批評の森』である。この文芸評論は後年の歴史哲学へ繋がる重要なものであるが,これまでの研究ではテキストの踏み込んだ解釈が殆どされてこなかった。 『古き批評の森』で論じられるのは,ヨハン・ヨアヒム・ヴィンケルマンの『古代美術史』である。ヘルダーはヴィンケルマンの古代芸術についての考察を讃えつつ,古代ギリシアを絶対視するような姿勢に反発している。古代ギリシア人が優れた芸術を生み出したのは,異文化との交流や伝統の継承のおかげであるというのだ。ヘルダーが美術史を表面的な様式の変遷として見るのではなく,人間の生の連なりとして理解しようとするのは,古代レトリック以来の模倣論が念頭にあったからだろう。伝統や異文化は,一種の雛形であり,時代や地域によって様々な芸術を生み出す。ヘルダーは芸術の変遷を原像と模像という動的な枠組みで捉えることにこだわった。

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