イギリス法における関係的契約論の新たな展開

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タイトル別名
  • The New Relational Contract in English Law
  • イギリスホウ ニ オケル カンケイテキ ケイヤクロン ノ アラタ ナ テンカイ

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説明

イギリスは一般原則として契約上の信義誠実義務を認めないことで知られていたが,大きな変化として,2013年に高等法院のYam Seng Pte Ltd v International Trade Corporation Ltd事件があった。このYam Seng事件でレガット裁判官は,当該の契約が関係的契約であることに着目し,信義誠実義務を事実黙示条項によって認定したのである。本判決の影響により,その後の裁判例,とりわけ合弁事業等の商事契約の分野では,契約当事者間の信義誠実義務の認定にあたり,当該の契約が関係的契約であったか否かが当事者によって争われることが一般的となっている。とりわけ2019年のBates v Post Office(No. 3)事件は,関係的契約論の諸要件を提示するなど,大きな反響をよぶものであった。本稿は,アメリカにおける関係的契約論の提唱者であるマクニールからイギリスの判例でも言及されているコリンズまでの関係的契約論の展開をまず整理し,次に最近の裁判例を分析することによって,現在のイギリスにおける関係的契約論が従来のそれとは異なる関係的契約論であることを明らかにしながら,この新たな関係的契約論のイギリス法における意義を検討するものである。

収録刊行物

  • 法学新報

    法学新報 129 (8-9), 1-36, 2023-03-10

    法学新報編集委員会

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