南北戦争を再上演する試み ―リエナクトメント映画としての『国民の創生』と「戦争映画」の視覚文法―

書誌事項

タイトル別名
  • Reenacting the Civil War: D.W.Griffith's The Birth of a Nation and the Lineage of Visual Grammar of the Early War Films in the United States.
  • ナンボク センソウ オ サイジョウエン スル ココロミ : リエナクトメント エイガ ト シテ ノ 『 コクミン ノ ソウセイ 』 ト 「 センソウ エイガ 」 ノ シカク ブンポウ

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抄録

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D・W・グリフィス監督の『国民の創生』(1915) は、単純化した勧善懲悪のプロットを敷き、正義と悪の浮沈を「白人」対「黒人」の対決に視覚化させる悪魔的な人種表象技法を提示して熱狂的な観客を生み出した。執筆者はグリフィスの採用した人種表象技法の源流が、米西・米比戦争期アメリカ合衆国の「戦争映画」作品群にて発明され、多用された映像技法である点に着目し、両者の文化文脈的な系譜性を論じる。黎明期の「戦争映画」作品群は、機材と技術上の制約から実写映像と創作映像を物語的に交ぜ紡ぐ上映方法を採用した。それはアメリカ社会に事実と創作を混濁的に享受する視覚的価値観を産み、次第に創作映像が事象の真実性を代理表象する転回を引き起こしていく。『国民の創生』を創作娯楽劇ではなく南北戦争を再上演する「戦争映画」作品と措定するときに浮上するのは、二〇世紀アメリカ社会が多様な領域で追求した「歴史のリエナクトメント」をめぐる文化的欲望である。

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