絵図からみる淀藩の土砂留め管理 : 「城州江州土砂留場絵図」の検討

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  • Erosion control Management Efforts of the Yodo Domain as Seen in Illustrations : An Examination of the Map of Construction Area of Erosion Control in Yamashiro and Omi province

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抄録

江戸幕府は淀川水系での堆砂防止のために、万治3 年(1660)に土砂留令を発布し、貞享元年(1684)からは大名に地域を割り当て毎年巡回させるなど、様々な事業を展開してきた。この土砂留めに関する研究は、法制度の変遷や個々の村における実態の検討が中心であり、広域的な土砂留め管理を実現する担い手や、各村(町)における土砂留めの実施状況を流域の視点で俯瞰的に捉えるための手段に関する研究は十分でない。そこで本稿では、淀藩の土砂留め管理に関わる絵図を収めた竪帳「城州江州土砂留場絵図」(京都産業大学図書館所蔵)について、資料学的分析を交えて作製過程を検討し、絵図の構成、記載情報、後筆の状況を分析した。その結果、本資料が土砂留め役人の巡回ルートを想定して編纂されたこと、寛政5 年(1793)~享和2年(1802)の間、水害や土砂留め普請の実施などにともなう現状変更が記録され、淀藩土砂留め役人の管理業務に利用されていたことが明らかになった。 また、記載に基づき、淀藩が管轄する各村(町)での土砂留めの工法や箇所について検討した。その結果、淀藩が管理する木津川(淀川)流域、宇治川・瀬田川流域において128 箇所の堰堤、30 箇所の小松植付を確認できた。竪帳を構成する40 枚の絵図(空白4 枚含む)から、68 村(町)等の土砂留めの様相を俯瞰的に示すことができた。

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