三河湾におけるアサリ資源の減少に伴う浮遊幼生の出現状況の変化

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  • ミカワワン ニ オケル アサリ シゲン ノ ゲンショウ ニ トモナウ フユウヨウセイ ノ シュツゲン ジョウキョウ ノ ヘンカ

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愛知県においてアサリは重要な漁獲対象種であるが,近年その漁獲量は大きく減少しており,原因究明及び資源回復への取り組みが求められている。アサリの資源形成には浮遊幼生の出現量が深く関わることから,愛知県の三河湾に調査点を4地点設定し,アサリ浮遊幼生の出現密度を2014年から2021年にかけて長期的に調査した。幼生の出現ピークは概ね7月頃と11月頃の年2回見られ,調査期間中の密度は0~10,563個/m3の範囲で推移した。同じ海域で2000年から2008年にかけて実施された調査とアサリ浮遊幼生の出現密度を比較したところ,経年的に出現密度が減少傾向にあることが示唆され,出現時期も短くなっている傾向が見られた。2000年以降のデータを用いて,三河湾におけるアサリ浮遊幼生密度とアサリ漁獲量との比較を行ったところ,概ね正の関係で対応していた。親-仔関係から,親貝量の減少や産卵量の低下等が浮遊幼生密度の減少要因として考えられた。また,仔-親関係には有意な正の相関が見られ,9月から11月にかけての平均浮遊幼生密度がおよそ3,000個/m3以下になると漁獲量の落ち込みが著しくなることから,資源回復には浮遊幼生量の増加が重要であると考えられた。二枚貝類全体の浮遊幼生量も減少傾向であり,湾域の二枚貝類現存量が低下している可能性が示唆され,アサリの資源回復には保護管理策の展開に加え,栄養塩の増加等の湾内環境の改善が必要であると考えられた。

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