「平和的生存権と人権に基づく地域主権・自治確立運動と平和学習~石川県「内灘」の平和学習から~」

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  • 「ヘイワテキ セイゾンケン ト ジンケン ニ モトズク チイキ シュケン・ジチ カクリツ ウンドウ ト ヘイワ ガクシュウ ~イシカワケン 「ウチナダ」 ノ ヘイワ ガクシュウ カラ~」
  • “The Right to Peaceful Survival, the Movement to Establish Regional Sovereignty and Self -Government Based on Human Rights, and Peace Studies ~From the Peace Study In “Uchinada" ,Ishikawa Prefecture"

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本稿はアジア・太平洋戦争後の日本における「平和運動の嚆矢」と呼ばれる「内灘ミサイル試射場建設反対運動」(通称「内灘闘争」ないし「内灘事件」。以下「内灘闘争」)について、中曽根内閣時代以降本格化した公的セクターの民営化(新自由主義への転換)や「不沈空母」発言のような軍拡等に見る権力的姿勢と政治手法を批判し、地域主権・自治や平和的生存権と個人の尊厳性を基本とする立場から石川県で平和教育、地域開発、住民自治などの観点から社会科を中心に学ばれていた「内灘闘争」を学ぶ実践と今日的意義を考察するものである。 全県的平和運動に発展した「内灘闘争」の主要な舞台石川県内灘村(現内灘町)は、金沢市と能登半島の間(口能登とも言う)にある。ここでは 全国の平和を願う人民、労働組合、研究者、学生らと共闘し、平和的生存権と人権、当時の内灘村の存続をかけて米軍・日本政府とそれを受け入れた県と闘った。この闘争は全国から多くの共感と支援を受け、最終的に試射場撤回に追い込んだ。勝利とは言えないまでも、その後の米軍による日本全国の軍事施設・設備拡大に歯止めをかけた。石川県能登半島入り口にある寒村の闘争に過ぎないように見えるが、この平和運動は日本中に設置された(されようとした)美国の軍事関連施設の拡大を阻み、後の「恵庭」「長沼」「百里」他の軍事関連(自衛隊含むゆえ日本の再軍備についての違憲論叢に発展した。)の裁判等にも影響を与えた。 日本の平和運動や自治権確立、人権闘争などの面を含む歴史的闘争(事件)となり、労働運動などの面では全国的共闘態勢を組むことや、これを弾圧する側の権力にとっても治安体制の再構築を求められたという点でも極めて豊富な内容を持つ。それゆえ、石川県の小中高校ばかりではなく、市民の平和学習などの一つとして定着し、今日でも大切な学習財・材、そして平和運動実践の礎となっている。 いわゆる「安倍軍拡」「安保法制」の強行、安倍・岸内閣による武器の爆買い、それも支払いの付け回しや(仮想)敵国攻撃及び米国の戦争に積極的に加担する異例の政治的措置によって日本の軍事大国化をすすめながら、一方で国民経済の破綻ないしは国民への負担を増大する増税や社会保険料負担の拡大などによる結果としての国民の窮乏化を加速している。国立大学(法人ではあるがやはり国立大学の名称は掲げ続けるべきである)への交付金減額と資金不足に陥る大学側の授業料値上げ、奨学金の貧困に見る教育費や医療費費負担増などは、軍事とグローバル資本主義による市民・国民生活の疲弊と無縁ではない。敵地攻撃のための戦略爆撃機1機の価格と維持費(パイロット養成含む)で、善隣外交に活用できる経費がどれだけ捻出できるか、教育や医療が必要な現場にどれだけ回すことができるか、シロートでも理解できるだろう。しかし、マスコミ操作も含めあらゆる情報媒体を使って国民意識を歪める努力を権力は怠らない。米国の良きパートナーとして、かの国が世界から尊敬されるよう進言、行動する日本の果たすべき矜持は放棄されつつある。これは、教育に携わる者にとって未来を閉ざす行為に見える。 そこで、「内灘闘争」に関する歴史学や法学等の評価を検討し、その上で遠山茂樹らによって提起された歴史学や関連諸科学と社会科教育、歴史教育の融合によって、日本の民主主義の前進を担う主権者育成のあり方についての課題を明らかにする。 今日の世界的緊張拡大情況、日本の際限のない軍事拡大と犠牲を強いられる沖縄の人々、「台湾有事」を有事としたい人々による既成事実の積み上げとイデオロギーコントロール、マスコミの劣化など顧みれば、内灘を学ぶ歴史的、法律的、社会的意義は大きいと言える。

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  • 科学/人間

    科学/人間 54 023-054, 2025-03

    関東学院大学理工学部建築・環境学部教養学会

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