肉用鶏における変異型マレック病ウイルスに起因したマレック病の分子疫学的解析および清浄化に向けた取り組み
書誌事項
- タイトル別名
-
- ニクヨウ ケイ ニ オケル ヘンイガタ マレックビョウ ウイルス ニ キイン シタ マレックビョウ ノ ブンシエキガクテキ カイセキ オヨビ セイジョウカ ニ ムケタ トリクミ
この論文をさがす
説明
2019年に沖縄県内すべての肉用鶏を処理する管内大規模食鳥処理施設が開設後,2020年にマレック病(MD)による廃棄羽数が増加し,その原因を調査した。分子疫学的解析の結果,6養鶏場の腫瘍組織(皮膚・肝臓・脾臓)由来株のマレック病ウイルス(MDV : Okinawa JPN 2020-2021株)から検出したMDV-EcoRI-Q(meq)遺伝子が同一であったことから,県内の肉用鶏におけるMDによる廃棄羽数の増加はOkinawa JPN 2020-2021株が原因であることが明らかとなった。また,処理施設内の環境由来(飛散した羽毛・埃)株の遺伝子型が腫瘍組織由来株と同一であったことから,各養鶏場と処理施設間における環境を介した当該株の伝播が示唆された。県内の肉用鶏は,ワクチン接種にもかかわらずMDの廃棄羽数の増加がみられたことから,不適正なワクチン接種やワクチン効果が不十分である可能性が考えられた。ワクチン接種については,接種直後の養鶏場への輸送による,免疫抑制下でのOkinawa JPN 2020-2021株への暴露の可能性が示唆された。また,Okinawa JPN 2020-2021株は過去にワクチンブレークを引き起こした中国株・国内株と同一のクラスターに分類され,Meq蛋白質のアミノ酸相同性が98%以上であり,国内外で未だ報告がない転写活性領域における2カ所のアミノ酸変異がみられた。病原性は不明であるが,養鶏場間(鶏舎間)でMD廃棄羽数の差が認められたことから,Okinawa JPN 2020-2021株は,MDVの汚染レベルによってワクチンブレークを引き起こしうると考えられた。したがって,県内の肉用鶏におけるMDによる廃棄羽数の増加は,ワクチン接種後の鶏の不適正な取扱いおよびワクチンブレークを引き起こしうるOkinawa JPN 2020-2021株が原因であると考えられた。そこで,MDの清浄化に向けて処理施設・搬出入業者に対して解析結果に基づく情報還元を行い,孵化場・養鶏場に対して衛生対策とワクチン接種後の適切な鶏の取扱いについてそれぞれ助言を行い,併せて家畜保健衛生所へ養鶏場のサポートをお願いした。
収録刊行物
-
- 鶏病研究会報
-
鶏病研究会報 59 (1), 16-23, 2023-05
つくば : 鶏病研究会