評価規約の規定要因 (3) : 斎藤学説

書誌事項

タイトル別名
  • ヒョウカ キヤク ノ キテイ ヨウイン (3) : サイトウ ガクセツ
  • Hyōka kiyaku no kitei yōin (3) : Saitō gakusetsu
  • Valuation rule and two conceptual views of earnings : case of Saito theory (3)

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説明

type:text

斎藤学説の特質は,事業資産・金融資産分類および配分・評価分類というふたつの資産分類の上に構築されていること,そして,そのふたつの分類は,前者の事業資産・金融資産分類が企業価値評価(企業価値差額としての損益計算)に由来しているのに対して,後者の配分・評価分類は投下資本回収計算としての損益計算(いわゆる純利益の算出にかかわる会計的損益計算)に由来しており,その素性を異にしていること,という2点に纏められる。 したがって,現行会計に関する説明理論の構築という視点からするかぎり,その論点にしても,おのずと,事業資産・金融資産分類の会計への援用可能性,配分・評価分類の妥当性,そして事業資産・金融資産分類と配分・評価分類との併存可能性という3点に整理できるであろう。 そこで,まず第1 の論点であるが,それについては,次の5点が問題になる。 ①事業資産・金融資産の評価規約の,現行会計実践に関する説明可能性 ②企業価値差額としての損益計算と会計的損益計算との相違に関する認識の欠如 ③損益の質的相違の識別可能性 ④現金項目の位置づけを巡る事業資産・金融資産分類の論理的成立可能性 ⑤事業資産・金融資産分類の,会計への導入の根拠 このうち,前号で取上げた①・②は,評価規約という量的側面に関する問題点であるが,結論的には,事業資産・金融資産分類は,現行会計実践を合理的に説明することはできないと筆者は考えている。 本稿は,それを承けて,残りの3点を取上げることにする。③は,損益の識別という質的側面に関する問題点であるが,事業資産と金融資産とを区別する主観のれんの有無というメルクマールからは,損益計上時期の遅速しか演繹できず,損益の性質は識別できない,というのが筆者の結論である。つまり,この点でも,事業資産・金融資産分類は,現行会計実践を合理的に説明できないのである。他方,事業資産・金融資産分類における金融資産には,現金項目が含まれているようであるが,そうした理解では,事業資産・金融資産分類は,損益計算上の分類として論理的に成立し難いように筆者には思われるのである。 このように,結論的には,事業資産・金融資産分類は,損益計算上の論理的な成立可能性 (④の論点) の点でも,現行会計実践の合理的説明可能性 (①・②・③の論点) の点でも,疑問があると筆者は考えている。そうであれば,斎藤学説が事業資産・金融資産分類を会計に導入したことの根拠が,問われなければならない。その点を,⑤において検討する。 結論的には,斎藤学説において,事業資産・金融資産分類を会計に導入する根拠は,欠如しているというのが筆者の考えである。

論文

収録刊行物

  • 三田商学研究

    三田商学研究 62 (4), 31-47, 2019-10

    慶應義塾大学出版会

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