〈告白〉の足もと -田山花袋「蒲団」の社会認識-

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  • 〈 コクハク 〉 ノ アシ モト : タヤマ カタイ 『 フトン 』 ノ シャカイ ニンシキ

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はじめに日露戦争従軍と自然主義文学 日本において自然主義文学を発生させた作家たちは浪漫主義文学の土壌のなかから現れたが、ロマンチシズムからリアリズムヘと至るこの流れの結節点には日露戦争の従軍体験がある。一九〇四(明治三七)年二月八日、旅順港を日本海軍が奇襲したことに発した日露戦争は、中国東北地方や日本海上での日本海軍の連勝を経ておよそ一年続いたが、これに当時の文壇から森鴎外と田山花袋が従軍している。戦地という過酷な状況で人間がいかに考え、行動するかを目の当たりにした彼らの「人生を戦場と見る眼には、そこにあるもろもろの虚飾こそ人間の真実を蔽いゆがめるものと考えるようになった。浪漫的な夢は破れて、現実の生そのものをみつめることが要求された」(和田謹吾「浪漫主義から自然主義へ」)。戦場において眼前の厳しい光景とそれをみつめる眼差しの向け方が、自然主義文学の〈真〉に迫ろうとする筆致と視点の徹底さを培い、ロマンチシズムはリアリズムヘと〈脱皮〉した。

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