書誌事項

タイトル
トーマス・マン : 神話とイロニー
タイトル別名
  • Thomas Mann : mythos und ironie
  • トーマス マン : シンワ ト イロニー
著者
洲崎, 恵三
著者別名
  • Suzaki, Keizo
学位授与大学
筑波大学
取得学位
博士(文学)
学位授与番号
乙第1483号
学位授与年月日
1999-03-25

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説明

本論の主人公は、トーマス・マン(Thomas Mann 1875-1955)文学である。この物語の織物は、<神話>という経糸と、<イロニー>という緯糸で紡ぎあわされている。この経緯の糸を解きほぐし、広大かつ深遠なこの20世紀ドイツの巨匠世界にいくばくでも解明の光を当てうればというのが、本論の意図である。 ...

目次

目次

序論 神話とイロニー

I テーマ:神話とイロニー、ミュトスとロゴス

1.ミュトスとロゴス

2.シンボルと神話

3.モデルとしての神話、神話と心理学

4.イロニー

II 構成、各章概要

III 日本におけるトーマス・マン受容、自然とフマニスムス

1.闘うフマニスト

2.三島由紀夫、辻邦生、北杜夫のトーマス・マン受容

3.心理学と神話

4.自然

5.自然とフマニスムス

IV 現代ドイツ文学とトーマス・マン-ドイツ20世紀前半小説の諸相-

1.価値真空時代の叙事詩

2.ドイツ20世前半小説の6つの諸相

3.モデルネの神話

第I部 神話(Mythos)

第1章 nunc stansと神話

I サント=ヴィクトアール山、Peter Handkeのnunc stans

II 『魔の山』の時間と無時間

III Schopenhauerのnunc stans

IV 祖型、祝祭、心理学としての神話

V 『パリ始末記』のAlfred Baeumler批判

VI 黄昏から曙光へ

VII 自然科学となったロマン主義(Siegmund Freud)

VIII 希望の原理としての神話(Ernst Bloch)

IX 大地(闇)の母から太陽(光)の父へ(J.J.Bachofen)

X 始源母胎への意識の光り

第2章 形式と深淵、アポロとディオニューソス-『ヴェネチアに死す』-

I 芸術と芸術家の問題性

II アポロ(形式)

III ディオニューソス(深淵)

IV 中間性と批評距離としてのイロニー-<形式と質料>衝動の綜合としての<遊戯>衝動-

第3章 『魔の山』(意志と表象としての世界)-ロマン主義か啓蒙主義か-

I 冥府<魔の山>への昇降、水平と垂直

II 意志と表象としての世界、永劫回帰と時計時間

III 意志、無形式、ロマン主義の勝利(B.Kristiansen)

IV 表象、形式、啓蒙へのイニシエーション(H.Koopmann)

V 魔の山にかかる想像力の虹(イロニー)

第4章 八つ裂き、エロス襲撃、ヘルメス-『ヨセフ』四部作三つのモチーフと根拠律-

I 八つ裂きモチーフ(死と再生)

II エロスの襲撃モチーフ、Mut=em=enetとJoseph

III ヘルメス・モチーフ、月

IV 根拠としての自然とロゴス

V 「はじめにロゴスありき」

第5章 メフィストーフェレスとしてのアドルノ-現代のDoktor Faustus-

I 実現されたユートピア

II 自然・非同一的なもの

III 銀蝿糞塊と麝香の匂い、死と人間性(『欺かれた女』)

IV Fantasia sopra Carmen 『カルメン幻想曲』

V 共作の感情移入(Mitdichtende Einfühlung)

VI 亀裂:Fieskoのムーア人M.Hussen

VII 絶えず否定する精神

VIII 同一性への抵抗としての個、自己否定による自己実現

IX 聖画像破壊(Ikonoklasmus)と再構築、Penelopeの織物

X イロニー:非同一の同一化、同一の非同一化

第II部 イロニー(Ironie)

第6章 イロニーの構造と歴史と自己意識-Beda AllemannとMartin Walser-

I 世界開示・真理現象としての文学

II ロマン主義のイロニー(Friedrich Schlegel)

III フィヒテ、西脇順三郎から、マンのバハオーフェンまで

IV トーマス・マンのイロニーの不毛性

V イロニーの遊戯空間・ガラス張りの鳥かご

VI 詩的イロニー・浮遊の焦点・創造的想像力

VII アイデンティティーとイロニー、正負の自己意識

第7章 イロニーと言語再生(モンタージュ)、表現主義論争、仮象と現実-Th.MannとHelmut Heißenbüttel-

序 連続と非連続の転回点

I 日本のトーマス・マン受容

II イロニー3態(中間性、批評距離、遊戯性)

III イロニーの表現構造・落差(差異)記号

IV ニヒリスムス

V 風景からレンズへ、所記から能記へ、芸術の自律化

VI 反文法的言語再生(H.Heißenbüttel)

VII 象徴から再生へ、主観の内面告白から外的略語的人間把握へ

VIII 表現主義論争、小説の理論、全体性とイロニー(G.Lukács)

IX 表現主義、リアリズム、単語の独立、モンタージュ(E.Bloch)

X 引用、伝統と革新

XI 強制された宥和、芸術的仮象と経験的現実の差異(Th.W.Adorno)

第8章 イロニーの相におけるトーマス・マンのニーチェ受容-『ある非政治的人間の考察』-

I ヴァーグナー、ドイツ性批評家としてのニーチェ

II 心理学者としてのニーチェ

III 自己磔刑の悲劇的倫理家としてのニーチェ

IV <生>の概念定立者としてのニーチェ

V イロニーと市民化

VI 非政治的人間と芸術的フマニスムス

VII ドイツ性、ロマン主義、音楽(R.Wagner)への惑溺とその克服

第9章 パレストリーナ、性と知の悪魔-イタリアへのマンのアムビヴァレンツ-

I 火と氷地獄

II Homophilie(火)

III エロスの襲撃

IV 仮面と素面、舞台と楽屋、小説と日記

V praenesteの悪魔(Karl Kerényi)

VI Dante:Inferno、氷地獄

VII 知の悪魔・イロニー

VIII Don Juan、Faust

IX Fiorenza、美とアスケーゼ

X アムビヴァレンツのイロニー

第10章 正負の自己意識(アイデンティティー)とイロニー-Martin Walserの論をめぐって-

I イロニーとは何か

II 自己意識とイロニー、正負のアイデンティティー

III M・ヴァルザー文学の基音-欠如-

IV 古典的イロニー(偽装)-ソクラテス-

V ロマン主義的イロニー(自己同化)-シュレーゲルとフィヒテ-

VI イロニーの弁証法(Peter Szondi、Hegel)

VII 正負の自己意識とイロニー

VIII M・ヴァルザーのトーマス・マン批判

結論 ミュトスとイロニーの織物-トーマス・マンの文学-

I 神話(ミュトス)

1.Venus Anadyomene

2.Aphrodite

3.マーヤ(Maja)のヴェール、物語の織物

4.Demeter=Persephone

5.Dionysos, Jesus Christus

II 神話、モデル、シンボル、ロゴス、イロニー、心理学

1.神話と祖型、自我の遠心と求心

2.新しき神話(Fr.Schlegel)、古代とモデルネ、神話と心理学

3.八つ裂きの神の再生への希望、永遠と瞬間(J.Habermas)

4.神話と象徴(W.Emrich)、心理学と神話(R.Wagner)

5.形象と意味。象徴、古典、ロマン芸術三形式(Hegel)

III 神話と啓蒙

1. Doktor Faustus、自然と理性

2.啓蒙の弁証法(Th.W.Adomo, M.Horkheimer. J.Habermas)

IV 偽装、自己同化、留保としてのイロニー(Uwe Japp)

V 対立原理の弁証法的宥和としてのイロニー

1.弁証法的宥和

2.同一性と非同一性、否定弁証法、イロニー

3.自然、エロスの襲撃 同一性の非同一化、非同一性の同一化としてのイロニー

主要参考文献

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