止血用エピネフリンの膣粘膜への局所注射により, 心肺停止となった潜在性QT延長症候群の1例

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抄録

26歳の女性. 生来健康であった. これまでに, 失神やアレルギーの既往なく, 健康診断で心電図異常を指摘されたことはなかった. また突然死や心疾患の家族歴も認めていない. 膣狭窄に対する膣拡張術施行中, 止血用3000倍希釈ボスミン7mL (エピネフリン換算2mg) を膣粘膜に局注した直後に, 血圧210/116mmHg, 心拍数188bpmまで上昇, その後QT時間が延長し, 心室性期外収縮が頻発, 局注後4分後に心室性期外収縮からtorsade de pointesとなり, 心肺停止となった. 心臓マッサージ開始後, 300 Jで電気的除細動を施行し, 洞調律に復帰した. 直後の心電図では, 急性冠症候群を示唆する所見や明らかなQT延長を認めず, 電解質も正常範囲内であった. 心エコー検査でも明らかな器質的心疾患を認めなかった. しかし, 術後2日目の心電図で明らかな要因なくQTcが552msと著明に延長していたため, 精査目的で電気生理学的検査が施行された. 右室心尖部, 右室流出路からのプログラム刺激ではVT/VFは誘発されなかったが, イソプロテレノール負荷にてQTcが375msから535msと著明に延長し, TU波の出現を認めたため, 潜在性QT延長症候群と診断した. その後, プロプラノロール30mg内服開始となったが, 予測最大心拍数近くまでの運動負荷でも明らかなQT時間の延長を認めなかったため, 運動制限, 妊娠制限せずに経過観察とし, これまでのところ経過良好である.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 46 (SUPPL.2), S2_96-S2_100, 2014

    公益財団法人 日本心臓財団

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