双胎妊娠により片側性肺水腫をきたした1例

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  • A case of unilateral pulmonary edema induced by twin pregnancy

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抄録

<p> 症例は30歳女性. 双胎妊娠のため当院産科通院中. 妊娠23週3日に切迫早産のため入院し子宮収縮抑制薬の加療を実施していた. 妊娠26週時に妊娠高血圧症と診断, 降圧加療を開始した. 妊娠27週3日より下腿浮腫, 呼吸困難感が出現した. 2日後呼吸状態が悪化したため緊急帝王切開術施行し原因精査・加療目的で当科紹介となった. 胸部X線にて右下肺にうっ血像, 経胸壁心エコーで僧帽弁後交連部から左房後壁に吹く高度僧帽弁逆流を認め, これに伴う片側性肺水腫と診断した. 降圧・利尿薬加療にて自覚症状, 心不全徴候は速やかに改善した. 産後11日目の経胸壁心エコーでは軽度~中等度の僧帽弁逆流を認めるのみで, 経食道心エコーでも僧帽弁後交連部の逸脱は認めなかった. 妊娠中の心拍出量は非妊娠時と比較し30~50%増加し, 双胎妊娠では単胎妊娠と比較しさらに20%増加する. 周産期の肺水腫発症は全妊娠中の0.05~0.5%と稀だが, 妊娠高血圧症や双胎妊娠, 子宮収縮抑制薬投与例では発症率が増加すると報告されている. 本症例では, 僧帽弁後交連部の結合織の脆弱性を背景にして, 圧・容量負荷の増大により偏位の強い逆流を生じ片側性肺水腫をきたしたものと推察する. 本症例を通じ周産期の循環動態の変化について文献的考察を加え報告する.</p>

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 48 (9), 1050-1054, 2016

    公益財団法人 日本心臓財団

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