ワルファリンとパクリタキセルの併用により著明なPT-INR延長をきたした1例

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タイトル別名
  • Case report: Marked increase in the PT-INR resulting from simultaneous administration of warfarin and paclitaxel

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説明

症例は65歳, 女性, 卵巣癌に対する子宮, 付属器切除術の既往歴がある. 肺塞栓症および深部静脈血栓症のため永久下大静脈フィルター留置を受けワルファリン療法を開始された. 経過中に卵巣癌の再発が確認されパクリタキセルを含む化学療法を受けたが, 投与数日後に出血症状が出現し, その後PT-INRは8.72と著明に延長した. その後も化学療法を施行するたびにPT-INRの上昇が見られた.<BR>パクリタキセルとワルファリンはともに血中において大多数がアルブミンと結合して存在するため, 両者を併用することでアルブミンから離れた活性型ワルファリンが増え, その作用が強く発現すると考えられている. 同様の機序がブコロームとワルファリンの間にも存在することは有名である.<BR>一方, パクリタキセルは骨盤内悪性腫瘍や肺癌, 乳癌などさまざまな悪性腫瘍に使用されるが, 悪性腫瘍では静脈血栓症を合併するリスクが高く, 下大静脈フィルター留置を行う機会も少なくない. また, 骨盤内悪性腫瘍は高齢者に多く, 同時に, 高齢者では心房細動の頻度が高くなり, ワルファリンを服用している症例も多い. したがって, 今後, ワルファリンとパクリタキセルを併用する患者は少なくないと考えられ, 両者の相互作用に特別な注意を要すると考えられた.

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 42 (2), 230-235, 2010

    公益財団法人 日本心臓財団

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