パン酵母の品質を支配する要素

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抄録

パン発酵の歴史は古くは西歴紀元前数千年にさかのぼり, 当時はパン種として野生酵母の繁殖した生地を次の仕込みにのこしていたが, その後純粋なパン種としてビール酵母が使用され, 19世紀の初めついにパン酵母が製パン用として工業的に独立して製造されるにいたつた。我が国では昭和4年に生産が始まり戦後の食糧難時代の粉食奨励により生産量は著しく増加し, 戦前の約7倍に達するにいたつた。このように古くより生産されていたにもかゝわらず酵母の製造技術は一般に公開されないこともあつて不明の点がきわめて多く特に品質に関する技術的諸問題のゆくてには無明未開の扉が固くとざされていた。酵母製造に関する技術は無機窒素同化, 通気, 流加法の完成とともに近年になつて著しい進歩発展をとげながら, 製造されたパン酵母の品質すなわち性能との関連についてはほとんど知られないまゝに, 品質を改良しようにも一定の指針もなく暗中模索の状態であつた。戦後結成されたわが国のイースト工業会はこの問題に直面し全力をあげてこれが解明に一致協力した。やがて多くの研究者技術者の不断の努力は科学技術全体のレベルの向上とあいまつてこの方向の科学技術にも輝しい曙光を投げかけた。現在, 外来イーストの輸入を阻止し逆に輸出の体制にあるのも, またメーカーによる品質の差が, ほとんど見られなくなつたのもそのためである。幸い, 私もイースト技術懇談会の一員としてイースト品質改良の研究に参加することができたので以下に酵母の品質とくに発酵力, 耐糖力, 耐久力, 凝集性, 色, 乾燥酵母の品質と酵母の栄養組成, 培養条件等品質改良に資する技術的方法についてとりまとめてみた。

収録刊行物

  • 生活衛生

    生活衛生 1 (2), 57-69, 1957

    社団法人 大阪生活衛生協会

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