大阪市内各河川の汚染状況

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抄録

最近河川の水質に対する各方面の関心が高まつて来た。本年7月20日来阪した経済企画庁, 厚生, 農林, 通産など関係各省が京都市内各河川, 京都下水処理場, 淀川沿岸の工場廃水, 桂, 宇治, 木津川合流点の水質, 大阪市の下水処理場, 大阪湾の屎尿投棄の状況, 大阪市内各河川を4日間に亘つて視察を行い, 関係各官公庁の意見をまとめて, 水質汚染防止法案を次期国会に提案されることになつた。そこで長い間水質問題に取組んで来た我々としては時機おそしの感があるが一歩前進として喜びに堪えない。<br>大阪市は水の都, 日本のベニスと云はれ都市生活に密接なる関係を有することは云ふまでもない。市民の保健衛生上よりは勿論, 産業, 水運更に都市の美観上よりも河川は重大なる意義を有する。河川は常に水量豊富, しかも清水を湛うることが望しい。<br>大阪市に於いては延長約183粁面積21074平方米に及ぶ大小河川が縦横に交錯し水運に貢献している。<br>人口の増加, 商工業の発達に伴い河川汚染度は年々高まり, その汚濁, 悪臭は市民保健衛生上一大脅威となり, 都市美観上不快な存在と化しつゝある事は誠に寒心に堪えない。<br>終戦後12年各種産業の伸張は著しいが一方下水処理施設はほゞ戦前のまゝであり, 市内各河川は干満の影響を受けて, 廃水の疎通が円滑をかき, 滞留し, 河水汚染の影響は港外相当遠隔の地点にまで及んでいる。<br>汚染の原因としては大阪市の下水処理区域外の工場廃水, 家庭下水, 船舶が考えられるが, それぞれの影響に就いては未だ明らかでなく, 今後の綿密な調査にまたねばならない。

収録刊行物

  • 生活衛生

    生活衛生 1 (2), 75-81, 1957

    社団法人 大阪生活衛生協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001204206142080
  • NII論文ID
    130003723201
  • DOI
    10.11468/seikatsueisei1957.1.75
  • ISSN
    18836631
    05824176
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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