難治性根尖性歯周炎から分離されたバイオフィルム様構造をもつ好気性有芽胞グラム陽性桿菌の同定と性状

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タイトル別名
  • A spore-forming Gram-positive aerobic rod isolated from a persistent periapical lesion has biofilm-like structures
  • ナンジセイ コンセンセイ シシュウエン カラ ブンリ サレタ バイオ フィルム ヨウ コウゾウ オ モツ コウキセイユウガホウ グラム ヨウセイ カンキン ノ ドウテイ ト セイジョウ

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抄録

近年の研究で, 難治性細菌感染症の80%以上にバイオフィルム形成細菌が関与しているといわれている.歯科領域においても細菌感染症の難治化がしばしば問題となっており, 原因の1つとしてバイオフィルムの関与が示唆されている.我々はこれまでに, 歯周病原細菌のバイオフィルム形成性と病原性との関連について報告してきた.今回, 難治性根尖性歯周炎病巣より分離した保存菌株の中に, 著明なバイオフィルム様構造を伴う好気性有芽胞グラム陽性桿菌(strain N38)を得たので同定し, その性状について検索した.Strain N38の表層構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると, バイオフィルム形成菌に特徴的な網目様構造が存在した.また, strain N38を生化学的ならびに分子生物学的手法により同定したところ, 結果は双方ともBacillus subtilis(B. subtilis)であった.そこで, strain N38の治療抵抗性の原因を知るため, ディスク法を用いて抗生物質感受性を検索した.その結果, strain N38はampicillin, cefalexin, minocycline, erythromycin, ofloxacin, cefteram vancomycinに感受性を示し, その感受性はtype strainのB. subtilis ATCC 6051と変わらなかった.次にstrain N38のバイオフィルム様構造について検討するため, 菌体をタンパク分解酵素処理し, 表層構造の変化をSEM観察した.その結果, タンパク分解酵素処理で菌体周囲の網目状構造は消失しなかった.さらに, これまでに報告されているB. subtilisのバイオフィルム形成に関与する遺伝子(pgcA)についてPCR法で解析した結果, strain N38はゲノム中にpgcAをもつことが確認された.Strain N38が菌体表層に網目状構造をもち, その構造物がタンパク分解酵素の影響を受けなかったこと, strain N38がバイオフィルム形成にかかわる遺伝子を保持していたことから, strain N38は菌体外多糖を産生し, バイオフィルムを形成して根尖性歯周炎を難治化させていることが示唆された.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 68 (3_4), 253-261, 2005

    大阪歯科学会

被引用文献 (7)*注記

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参考文献 (33)*注記

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