Rothia mucilaginosa DY-18株が産生する菌体外網目様構造物の精製と化学組成解析

書誌事項

タイトル別名
  • Chemical composition of exopolymeric substrate produced by Rothia mucilaginosa
  • Rothia mucilaginosa DY 18カブ ガ サンセイ スル キンタイ ガイ アミメ ヨウ コウゾウブツ ノ セイセイ ト カガク ソセイ カイセキ

この論文をさがす

抄録

根尖性歯周炎の難治化には様々な要因が関与しているが,その真因が病巣での細菌の残存であることが,多くの研究により明らかになっている.我々はこれまでに,数回の根管治療後も細菌検査の結果が陰性にならず,疼痛,腫脹を繰り返す難治性根尖性歯周炎の病巣から分離されたRothia mucilaginosa(R.mucilaginosa)DY-18株を同定し,報告している.DY-18株の菌体表面を走査型電子顕微鏡で観察すると,菌体間に網目様構造物が存在する.本研究ではDY-18株の菌体外網目様構造物の化学組成を解析することを目的に精製と組成解析を試みた.DY-18株は,多糖結合性の蛍光色素Calcofluorを含む培地で培養すると,形成されたコロニーが蛍光反応を示した.このことからDY-18株は,exopolysaccharide(EPS)を産生することが示唆された.DY-18株の培養上清から得た精製網目様構造物を加水分解後,高速液体クロマトグラフィーで解析したところ,中性糖として主にgalactose,mannose,rhamnose,glucoseを,アミノ糖としてalucosamineとgalactosamineを含むことが明らかになった.また,試料中の菌体外DNAを紫外線スペクトル法で,uronic acidをcarbazole硫酸法で定量したところ,DNAをほとんど含有しておらず,uronic acidも検出限界値以下であった.これらのことからDY-18株が産生する菌体外マトリックスは主としてEPSからなり,中性糖とアミノ糖を含むことが明らかになった.細菌が形成するバイオフィルムは,環境抵抗因子として働くことが知られている.また,多くの疾患で,バイオフィルム形成菌と疾患の難治化の関連が報告されており,EPSを産生するR.mucilaginosaもバイオフィルムを形成することにより,宿主の免疫機構や治療の際の薬物の作用から逃れ,難治性根尖性歯周炎を引き起こしていると考えられる.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 73 (2), 45-54, 2010

    大阪歯科学会

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

参考文献 (47)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ