膿汁中細菌の微細構造ならびに画像処理

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タイトル別名
  • Ultrastructure and Image Processing of Bacterial Abscesses

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抄録

口腔感染症の発症機構を宿主と寄生体の相互反応の面から解析するために, 膿汁中に存在する食細胞の細菌貪像を電子顕微鏡学的に観察した. さらに, この写真をデジタル画像計測装置に入力して計測し, 細菌の病原性因子と宿主の抵抗性因子の発現状態を検討した. 実験に供した膿汁は5例の膿瘍から採取した. これらを嫌気培養すると, 全症例から細菌が検出された. 透過電子顕微鏡で観察すると, 多数の正常グラム陰性菌およびグラム陽性菌が観察された. 細菌の量的変化を知るために食細胞のファゴソーム内における細菌の占有率をデジタル画像計測装置で測定すると, グラム陰性菌が33.0%, グラム陽性菌が43.8%であった. また, 食細胞ファゴソーム断面当たりの細菌数は1ないし30個みられた. ついで細菌の質的変化として莢膜を観察した. 莢膜の出現頻度はグラム陽性菌よりグラム陰性菌で高かった. 細菌細胞における莢膜の占有率はグラム陰性菌で33.0%, グラム陽性菌では26.7%とグラム陰性菌で大きかった. また, グラム陰性菌の外膜由来小胞の個々の直径と面積は, それぞれ平均26.0nmおよび541.0nm2であった. リソソームの宿主細胞内およびファゴソーム内占有率を測定すると, それぞれ20.5%および21.1%であった.<br>  以上のことより膿瘍形成に至った理由を推定すると, 莢膜を有する細菌が食細胞の殺菌機構に抵抗してファゴソーム内で増殖するとともに, 小胞形成能が高くなり, 内毒素や組織破壊酵素を口腔組織に分散させたことも一因と考えられる. また, デジタル画像計測法で宿主の抵抗性因子と細菌の病原性因子を量的および質的に数値化できることが明らかとなった.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 58 (3), 232-244, 1995

    大阪歯科学会

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (32)*注記

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