Laser Nitriding Treatment of Titanium Prostheses

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  • チタン系補綴物のYAGレーザによる表面窒化法の特徴

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Abstract

純チタンは補綴物としての機械的性質が十分とはいえず, また, 鋳造時に反応層が形成される. また, 研磨を行っても光沢のある表面に仕上げることが困難である. このため, チタン製補綴物の機械的性質や色調および生体親和性の向上を目的とした, イオンプレーティングや窒素雰囲気でのファーネス加熱による表面改質方法が応用され始めている. しかし, これらの窒化方法は, 作業時間が長いうえに, 補綴物の一部のみを窒化することが困難である. そこで, レーザ窒化に着目し, 他の窒化法と比較検討し, レーザ窒化法の特徴を明確にした. 実験には, 純チタン圧延板および本講座で試作した熱膨張抑制埋没材(シリカ系)で鋳造した試料とチタベストCB (ノンシリカ系)で鋳造した試料を用いた. レーザ窒化は, 連続発振YAGレーザ加工機にて, 出力を500W, 焦点はずし距離を0mm, ワークテーブルの移動速度を30mm/s とし, 窒素ガス雰囲気で行った. イオンプレーティングおよびファーネス加熱窒化は, それぞれ専門の業者に, 補綴物に対して行っている一般的な条件で処理するように依頼した. 製作した窒化試料の特徴を, 1)X線回折法による結晶構造解析, 2)表面の電子顕微鏡観察, 3)表面あらさの測定, 4)金属組織観察および窒化層の厚さ測定, 5)3点曲げによる割れ発生状況と窒化層の密着性の観察, 6)硬度測定, 7)耐摩耗性試験によって評価した. X線回折法によって, レーザ窒化とイオンプレーティングではTiNが, ファーネス加熱窒化ではTi_2Nが同定できた. 表面の電子顕微鏡観察では, レーザ窒化は比較的平坦な部分と粗な部分が観察されたが, イオンプレーティングとファーネス加熱窒化では窒化しないものとほぼ同様であった. 表面あらさでは, レーザ窒化は, 純チタンをサンドブラスト処理したものよりも粗くなったが, イオンプレーティングとファーネス加熱窒化では, 窒化しなかった試料とほとんど同じであった. 断面金属組織観察によると, レーザ窒化ではTiN層, TiN-Ti混合溶融部, 熱影響層および母材結晶粒が, イオンブレーティングではTiN層と母材結晶粒が, そしてファーネス加熱窒化では窒化層と粗大化結晶粒がそれぞれ観察された. また, レーザ窒化した鋳造体試料では, 鋳造時に発生する反応層が消失していたが, イオンプレーティングとファーネス加熱窒化では窒化層の下に残存していた. 窒化層の厚みは, レーザ窒化では, 100μm以上であったのに対し, イオンプレーティングでは1.3μm, ファーネス加熱窒化では0.7μmであった. 3点曲げによって, 窒化した試料すべてに割れが発生した. ビッカース硬さは, 窒化した試料のいずれもが, 窒化しなかった試料よりも高くなり, レーザ窒化した試料が最も硬化が著しかった. 試料の耐摩耗性試験による200回摩耗後の重量減少量は, 窒化しなかった試料では2.39mgであったのに対し, 圧延板のレーザ窒化では0.37mg, イオンプレーティングでは0.93mg, ファーネス加熱窒化では1.23mgとなり, 窒化処理によって耐摩耗性の向上がみられた. とくにレーザ窒化による耐摩耗性の向上が著しかった. 以上のことから, レーザを用いたチタン表面の窒化処理は, 硬度や耐摩耗性といった機械的性質では他の窒化処理よりも優れていた.

Journal

  • Shikaigaku

    Shikaigaku 58 (2), g73-g74, 1995

    Osaka Odontological Society

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