奥日光地域におけるウラジロモミ林の分布特性および年輪解析による更新パターンの予測

書誌事項

タイトル別名
  • Distribution characteristics and regeneration opportunities predicted by annual ring analysis of Abies homolepis Sieb. et Zucc. in Oku-Nikko area, Tochigi Pref., central Japan
  • オクニッコウ チイキ ニ オケル ウラジロモミリン ノ ブンプ トクセイ オヨビ ネンリン カイセキ ニ ヨル コウシン パターン ノ ヨソク

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説明

奥日光山地においてウラジロモミ林の分布特性を把握するとともに,年輪解析によってウラジロモミ林における更新の時期とその後の成長経過を明らかにし,更新様式を提示した。空中写真判読と踏査による現地調査結果から,ウラジロモミが広範囲に高密度で純林状となる場所,および単木あるいは局所的に小集団で生育している場所の2つに区分した。男体山南斜面にはウラジロモミが最も広く純林状に分布していた。一方,傾斜が急になるにしたがってウラジロモミの本数密度は増加するが,個体サイズは減少していた。ウラジロモミがパッチ状に生育していた場所は,湖畔やその周辺の氾濫原の自然堤防上など特徴敵な立地条件であった。年輪解析の結果、ウラジロモミの発芽,定着時期や直径成長の傾向が3タイプ(定着後良好な成長,一定期間の被圧後の成長,定着後の長期にわたる被圧状態)に区分できた。ウラジロモミの発芽,定着や成長促進が起きた時期は,いずれの場合にも台風の襲来時期と一致していた。とりわけ1800年代半ば,1900年代初め,1900年代半ばの更新および世代交代が著しく,それ以前に発生した樹齢を持つ個体は確認できなかった。1959年の伊勢湾台風による林冠の衰退と疎開は,林内においてウラジロモミの稚幼樹群が発芽,定着できる条件をもたらしたことが確認できた。なお,現在樹齢130〜160年に達している奥日光山地のウラジロモミ林は,世代交代の時期を迎えており,稚樹が準備されるべき時期であると考えられる。ウラジロモミの衰退による林冠の疎開、それにともなった稚樹の準備,その後の交代契機となる大規模な林冠欠如,およびそれをもたらす台風の襲来との関係はウラジロモミの更新様式として整理でき,奥日光に成立しているウラジロモミ林の更新パターンを明らかにした。なお,最近,奥日光山地では,シカの樹皮剥ぎによるウラジロモミの枯損などの問題が顕在化しており,これらの更新に与える影響を早急に検討する必要がある。

収録刊行物

  • 森林立地

    森林立地 45 (2), 55-63, 2003

    森林立地学会

被引用文献 (4)*注記

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参考文献 (21)*注記

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