秩父山地における林冠の撹乱規模の異なるイヌブナ天然林の20年間の再生過程

書誌事項

タイトル別名
  • Regeneration processes of natural Japanese beech (Fagus japonica Maxim.) forests under different canopy disturbances for 20 years in the Chichibu Mountains
  • チチブ サンチ ニ オケル リンカン ノ カクラン キボ ノ コトナル イヌブナ テンネンリン ノ 20ネンカン ノ サイセイ カテイ

この論文をさがす

説明

林冠の撹乱規模の違いがイヌブナ天然林の再生過程に及ぼす影響を解明するため,太平洋側山地帯の東京大学秩父演習林において,1990年の皆伐による大規模な林冠撹乱を受けた林分(皆伐区)と数本の林冠木の倒壊による小規模な林冠撹乱を受けた林分(天然林区)にそれぞれ一つずつ方形区(皆伐区:40m×40m,天然林区:50m×70m)を設置し,20年間(1984〜2004年)の林分構造の変化を比較した。皆伐区では上層(H≧7m)はウダイカンバ,ウリハダカエデ,ミズメが,下層(H<7m)はイヌブナの萌芽幹と実生起源の幹および稚樹(1,431本/ha)がそれぞれ優占し,上層の優占種であるウダイカンバの後継樹はなかった。天然林区では林冠ギャップ周辺のイヌブナ株内に待機していた萌芽幹が林冠ギャップ形成に反応して成長し,同様に下層のホオノキ,ミズキ,コミネカエデ,新たに侵入したミズキ,ナツツバキがより急速に成長していた。これらのことから,皆伐による林冠撹乱下では,ウダイカンバ,ウリハダカエデ,ミズメなどの先駆樹種が先に林冠に到達し,その後イヌブナの萌芽や,実生更新に由来する稚樹によって林冠が再生されると考えられた。一方,小規模な林冠撹乱下では,林冠ギャップ形成以前から下層で待機していた高木性樹種の前生稚樹やギャップ形成後新たに侵入した高木性樹種の稚樹が先に林冠に到達し,その後イヌブナの萌芽更新によって林冠が再生されるものと考えられた。

収録刊行物

  • 森林立地

    森林立地 51 (1), 39-48, 2009

    森林立地学会

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

参考文献 (32)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ