再開発事業地区の核店舗撤退後の床状況とその対応に関する研究

書誌事項

タイトル別名
  • A study on floor vacancies and response after the withdrawal of key tenants in redevelopment area
  • サイカイハツ ジギョウ チク ノ カク テンポ テッタイ ゴ ノ ユカ ジョウキョウ ト ソノ タイオウ ニ カンスル ケンキュウ

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抄録

全国各地の再開発事において大型店をキーテナントとして誘致することで保留床を処分し、事業費の大半を賄ってきた事例が多い。しかしながら百貨店やスーパーは長引く不況、専門店や 24時間営業店にシェアを奪われることで売上げの減少を余儀なくされ、特に地方都市においては大型店の郊外進出により、中心市街地に立地する大型店では客足が奪われることとなっている。その結果全国各地の大型店は倒産による閉店や不採算店舗の整理による撤退例が増えている。このような状況の中、百貨店・スーパーをキーテナントとしていた再開発ビルでは店舗の撤退後に後継テナントが入ることなく大きな空床が生じており、活用されていないビルが存在することは周辺環境に大きな影響を与えていると考えられる。地域全体の活性化を抑止するだけではなく、市街地の衰退を促進させてしまう存在になりかねない。そもそも法定の市街地再開発事業は土地の高度利用と都市機能の更新、公共の福祉に寄与することを目的としており、事業収支の一部を国や自治体からの補助金で賄っている。つまり完成した再開発ビルは社会性を備えた施設と考えることができ、その有効な利用が必要であることはいうまでもないが、実際には空床がある地区では目的の達成どころか悪影響を与えてしまっているのが現状である。今までのところ全国の再開発ビルにおける核店舗の撤退、またその後の空床発生に関する状況を把握した調査は無い。また、再開発ビルの管理運営や自治体支援に関する研究はあるものの、核店舗の撤退・空床発生に焦点を当てた管理機関の対応、また自治体の対応に関する研究は見当たらない。そこで、本研究ではまず法定市街地再開発事業完了時に核店舗(百貨店・スーパー)を持つ全国の再開発ビルを対象にアンケート調査を行い、核店舗の存続・撤退の確認、撤退後の空床の面積・利用状況を把握する。そしてその際の管理機関、空床発生の傾向や問題点を明らかにし、管理機関と自治体の適切な空床の利用、管理機関を自治体のあるべき姿について考察することを目的とする。本研究の結果は以下のようになる。・調査対象地において 195地区中 51地区の初期核店舗が撤退しており、そのうち 31地区が空床のままとなっている。今後も核店舗の撤退、空床の発生が増加していく傾向にある。・再開発ビルにおける核店舗の撤退は、周囲の中心市街地の衰退状況と密接な関係にあり、また自治体の協力姿勢は中心市街地活性化基本計画の区域内外によって少なからず影響される。・現状として、管理機関の要望と自治体の協力が一致しておらず、管理会社の運営機能の欠如、権利者の意見調整機関の不在、自治体側での支援体制の不足が問題点として指摘できる。空床存続地区のみだけではなく店舗存続地区も含めて再々開発を望む地区は少なくないが、多くの自治体にとっては資金面で実現困難であり、再々開発のみならずリーシングの第一歩として、管理機関の意見調整機能を高めて行くことが必要であると考えられる。また、昨年の法改正によって民間の再開発を促進することになったが、再々開発への手段としての利用が考えられるだろう。

収録刊行物

  • 都市計画論文集

    都市計画論文集 38.3 (0), 265-270, 2003

    公益社団法人 日本都市計画学会

被引用文献 (4)*注記

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参考文献 (4)*注記

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