縞枯山の植生についての生態学ならびに生理学的研究

書誌事項

タイトル別名
  • Ecological and Physiological Studies on the Vegetation of Mt. Shimagare
  • IV. Some Physiological Functions Concerning Matter Production in Young <i>Abies</i> Trees
  • IV. <i>Abies</i> 幼樹の物質生産機能について

抄録

すでに報告された縞枯山のシラビソ•オオシラビソ第5森林の約20年生林分の優勢木, 平均木, 劣勢木 の各器官について, 同化能, 呼吸能および全窒素含量を主に1957-8年にわたって夏測定した.<br>各階級木において針葉は老令化とともに厚くなるが同化•呼吸率は面積単位においてすら減少した. 同 一年令葉において針葉は階級木の劣勢化とともに薄くなるが, 同化•呼吸率は重量単位でさえ減少した. 針葉の厚さや同化•呼吸能についての各階級間での差異はいわゆる陰•陽葉間の差異に相当するが, これ は各階級間での群落内光環境の差異にもとづいている. 一般にオオシラビソより薄い葉をもつシラビソ は重量単位ではオオシラビソより大きな同化•呼吸率を示したが, 面積単位ではさほど大きな差はなかった. 針葉の全窒素含量は, 面積単位で葉令間差異が不明瞭だったほかは, 同化•呼吸能と葉年令, 樹木階 級, 樹種との関係に似て変化していた. またこれら針葉の全窒素含量と同化能や呼吸能との間にはほぼ直線的な関係があった. 飽和光3万ルクスにおける平均木の各年令葉の光合成最適葉温は20°で, 楠元氏によって報告された鹿児島地方の常緑広葉樹の値よりかなり低く, 縞枯山の寒い気候と一致していた.<br>重量単位の小枝の呼吸率とその全窒素含量とは小枝の直径が大きいほど低いが, 単位表面積あたりでは 逆であった. また, 小枝の窒素含量は小枝の直径が同じでも古い小枝ほど, また劣勢木のものほど含量は少なかった. 幹全体の呼吸率は重量•面積両単位において, 小枝と同様な直径関係が各階級木についてみられたが, 劣勢木は常に最小値を示し, 優勢木と平均木との間には差がなかった. 根全体の重量単位呼吸 率についても幹と同様な階級間差異がみられた. 小枝の呼吸能と全窒素含量, 幹や根の呼吸能については 両樹種間ではっきりした差は認められなかった.

収録刊行物

  • 植物学雑誌

    植物学雑誌 73 (862), 133-141, 1960

    公益社団法人 日本植物学会

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001204223182336
  • NII論文ID
    130004076863
  • DOI
    10.15281/jplantres1887.73.133
  • ISSN
    21853835
    0006808X
  • データソース種別
    • JaLC
    • Crossref
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ