Ymer-80, the Swedish Arctic Expedition 1980

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  • イーメル80-1980年に行われるスウェーデンの北極探険
  • イーメル 80 1980ネン ニ オコナワレル スウェーデン ノ ホッキョク

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スウェーデンでは, 100年前になされたA. E. ノルデンショルドによるユーラシア周航という地理学上の偉業を祝福すべく, イーメル80という名で, 北極探険が計画されている。調査には, 砕氷船イーメル (全長100m, 22, 000馬力) のほか, ノールウェイ極地研究所の調査船, ヘリコプター2機等が参加する。イーメルの航行ルートは地図に示すとおりである。調査は陸上でも行われる。本計画の前に, イーメル79と称して, 主としてシベリアの海岸に平行に航行する1979年実施の計画が立てられたが, ソ連の協力が得られなかったこともあり中止となった。しかし, 科学的な価値は本計画の方がむしろ上である。この探険での研究の対象は多岐にわたる。気象学の部門では, 大気中の汚染物質 (気体, エーロゾル, 放射性同位元素等) や流氷と接する気層の夏期の冷却およびそれに関係する層雲や霧の発生などについての調査が行われる。海洋学の部門では, まずは, 北極海をめぐる水の交換とその気候への影響, 海水の動き, さらには海洋汚染などを究明すべく, 海洋物理学と海洋化学の立場からの調査が行われる。本探険での生物学上の中心的プログラムの一つは, 北極海における種の進化である。生物学者は, 地質学者の協力を得て, 温暖な第三紀初期から第四紀の氷期にかけて, 環境と時間と種の進化の関係について考察する。さらに, 厚い氷におおわれた地域での海洋生物や環境破壊の実態を究明すべく, 数多くの生物の標本を集める。また, 生物学の魅力的な分野の一つとして, 北極熊の生態の調査も行われる。地理学者, 氷河学者は, コングカールスランドでの更新世および現世の氷河作用について研究することになろう。接地逆転と氷河の消長の関係についても研究がなされる。地球的規模での気候変化の研究がさらに前進するためには, ヨーロッパ北極での氷床の可能なつながりを知る必要がある。バレンツ海では, 海底堆積物のコアが採取される。さらに何人かの海洋地質学者と地球物理学者は, 大陸斜面と深海底の堆積物に関する問題に取り組む。15~20mのコアが回収されることが望まれる。少なくとも数百万年前までの堆積物を調べられることが必要である。このような堆積物は, 気候変化と更新世の氷床の広がりを反映するであろう。さらには, 大陸移動や火山活動の歴史も研究されることになろう。

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