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- 藤田 一郎
- 大阪大学大学院生命機能研究科
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説明
我々が住む世界は空間的に3次元の世界である。そして、多くの人は、この世界を3次元の世界として知覚する。奥行きの知覚は片目でも得ることができる。それは、網膜に映った像の中に含まれる線遠近法、遮蔽、テクスチャー勾配、輝度勾配などの視覚手がかりが奥行きの手がかりとなるからである。しかし、閉じていた目を開き、実世界を見たときには、片目では得ることのできないビビッドな立体感を感じる。<BR> 2つの目は異なる位置から世界を見るため、両眼視野内のすべての視覚対象(視覚特徴)は、左右の網膜像の間で、わずかな位置ずれを持っている。その位置ずれは両眼視差と呼ばれ、視覚系は、この位置ずれを利用して奥行きを定量的に検出し、両眼立体視を実現する。<BR> 両眼視差の検出は一次視覚野(V1)で行われる。V1細胞は、ごく小さな受容野を持つが、左目受容野と右目受容野に投影されている画像の空間的相互相関を計算することで両眼視差を算出する。両眼視差の検出はV1で行われるものの、V1細胞の視覚反応の性質は、さまざまな点で、両眼奥行き知覚の心理学的な性質と異なっている。すなわち、V1細胞は両眼視差の検出を担うものの、その活動がそのまま奥行き知覚に結びついているのではない。<BR> 両眼奥行き知覚の成立には、背側視覚経路(V1野から頭頂葉へいたる経路)および腹側経路(V1野から側頭葉へいたる経路)の両方が関与している。前者は、粗い奥行き知覚(coarse stereopsis)、両眼視差に基づいた反射性輻輳眼球運動、高速で変化する視覚刺激の奥行き検出に関わっており、後者は、細かい奥行き知覚(fine stereopsis)と粗い奥行き知覚の両方、相対視差の検出に関わっている。
収録刊行物
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- 日本視能訓練士協会誌
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日本視能訓練士協会誌 40 20-21, 2011
公益社団法人 日本視能訓練士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001204247843968
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- NII論文ID
- 10030281421
- 130004552609
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- NII書誌ID
- AN10084015
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- ISSN
- 18839215
- 03875172
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- データソース種別
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- JaLC
- Crossref
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可