見えるということ

  • 西田 輝夫
    山口大学名誉教授、宇部市 大島眼科病院、福岡市

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  • The Value of Vision

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抄録

わが国は、今日世界有数の長寿国である。量的な豊かさ わが国は、今日世界有数の長寿国である。量的な豊かさに加え、質的な豊かさを考えてみる必要がある。幸せな人生の基本は、常に激しく変化している環境(季節や気候などの自然現象とともに職場や家庭などの社会的環境)との関わりを十分に持って生きていくことであろう。私たち人間は、常に変化する環境の中で、心身の恒常状態を維持して生活することが極めて重要である。その為には、感覚器の果たす役割が極めて重要となる。五感の中で、私たち人間は視覚に大きく依存して生活している。<br> 視覚器には、角膜、虹彩、水晶体、硝子体や網膜が含まれる。外界の入射光は、透明な角膜を通過し網膜に焦点を合わせ、光のエネルギーを化学エネルギーからさらに電気エネルギーに転換し、視神経を通じて脳に情報を提供している。角膜の透明性と形状が適切に維持されていることが、良い視機能を得る第一歩である。<br> 今日、多くの角膜疾患を治すことができるようになってきたが、同時にまだまだ治癒せしめ得ない角膜疾患も多く存在する。私たちは、角膜上皮創傷治癒の機序に関する研究を行ってきた。これらの科学的な研究に基づき、遷延化した角膜上皮欠損を治療する新しい薬剤を開発することができた。本稿では、見えるということの意義を考察し、私たちの難治の角膜上皮疾患に対する橋渡し研究の足跡を述べる。

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参考文献 (17)*注記

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